段ボールを利用して日々、商品などを運ぶ際に、「どのくらいの衝撃が加わったら破損につながるのだろうか」「より耐性の優れた段ボールはどう選べばいいのだろうか」など疑問に思われることもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、段ボールの耐荷重の概要から耐荷重の決まり方、理論値と現場の耐荷重の目安、段ボールのJIS規格の見方など、段ボールの耐荷重に関する情報をお探しの事業者の方に役立つ知識をご紹介します。
段ボールの耐荷重とは?
まずは段ボールの耐荷重の概要をご紹介します。
段ボールの耐荷重とは
段ボールの耐荷重とは、段ボール箱(ケース)の底面に均等に荷重(=荷物の重さ)がかかったときに、耐えられる重さを意味します。
耐荷重は「圧縮強度」とも呼ばれています。箱に一定速度で上から圧縮荷重を加えたときに、どの程度までつぶれずに耐えられるかという度合を指します。
段ボールの耐荷重の測定方法
段ボールは製造時に包装試験を行い、破裂や振動、落下などを通じて耐久性や品質を確認します。その試験のうち、耐荷重に関係する測定を行う圧縮強さ試験について、主な試験方法を見ていきましょう。
・圧縮強さ試験
- 段ボール原紙の圧縮強さ試験
段ボール原紙のつぶれにくさを測定する試験です。原紙をリング状にして測定器に挿入し、一定の速度で上から加圧し、座屈した時点の最大荷重を測定します。
- 段ボールシートの平面圧縮強さ試験
段ボール箱に組み立てる前のシートのつぶれにくさを測定する方法です。水平に置いたシートに対して、上から一定の速度で加圧し、シートの段がつぶれる直前の最大荷重を測定します。これを「平面圧縮強さ」と呼びます。
- 段ボールシートの垂直圧縮強さ試験
平面だけでなく、垂直方向の圧縮強さの試験も行います。段ボールシートを垂直に置き、上から加圧して測定します。これを「垂直圧縮強さ」と呼びます。
- 段ボール箱の圧縮強さ試験
段ボール箱に組み立てた後の、つぶれにくさを測定する試験です。箱の状態で置いたものに対して、箱が座屈するまで上から加圧します。圧縮荷重や圧縮量、箱の中身の損傷度合等を測定します。
段ボールの耐荷重は何で決まる?
段ボールを梱包箱として用いる場合、内容物に応じて、できるだけ耐荷重の高いものを選びたいこともあるでしょう。その場合、「耐荷重は何で決まるのか」を知っておきたいところです。そこで、主な耐荷重を決める要素をご紹介します。
段ボール原紙のバージンパルプの量
段ボール原紙は古紙やバージンパルプ(新しい紙)を用いて作られますが、古紙よりバージンパルプは強度が高いため、強度(耐久性)が上がると考えられます。
段ボールシートの中芯の段の数と高さ
段ボール原紙を重ねて作る段ボールシートの真ん中には「中芯」という段(波)のある原紙を用いますが、その段の数が多いほど、また段の高さが高いほど耐久性が上がります。
段ボールシートの重ねた層の数
段ボールシートは通常、1層のシングルですが、シートを2枚重ねたダブルも流通しています。シングルよりもダブルのほうが強度に優れます。
段ボール箱の縦・横・高さの寸法
段ボール箱として組み立てた状態の、縦・横・高さの寸法によってもつぶれにくさが変わります。
段ボール箱の方式
段ボール箱を組み立てる方式には、いわゆるみかん箱タイプのA式、ふたや底面が差し込み式になっているB式、身とふたを組み合わせる弁当箱型のC式などがありますが、この方式によっても強度や耐久性が変わります。一般的にA式とC式のほうがB式と比べて強度が高いといわれます。
内容物の形状や性質
段ボール箱の内容物の形状や性質によっても変わります。硬いものであれば箱全体の強度が上がり、やわらかいもの、軽いものであれば耐久性は下がるでしょう。
使用の環境
段ボール箱の保管や輸送環境によっても強度が変わります。特に段ボールは湿気に弱いため、湿度が高い環境下では強度が下がります。
底面のテープの貼り方
段ボール箱を梱包する際にテープを利用することが多いですが、底面の貼り方によって強度や耐久性が変わるといわれています。
パレットへの積み付け方
段ボール箱をパレットへ積み付ける方法は複数ありますが、どれを選ぶかによっても強度や耐久性が変わります。中でも「棒積み」と呼ばれる、箱全体に対して均等に荷重がかかる積み方は強度を高く保てるといわれます。
理論値と現場の耐荷重の目安
段ボールの耐荷重は理論値となるため、現場使用時とは大きく異なります。
例えば、最も一般的に使われている「AフルートのA式段ボール箱」の場合を見てみましょう。Aフルートとは、約5mmの厚さで、段の数が30cmあたり34個±2の段ボールシートを指します。
理論値:300~500kg程度
理論値では、耐荷重は300~500kg程度です。つまり最大500kgまでの重さによる圧力に耐えられるということです。
現場での目安の値:新品・乾燥状態で20~30kg程度
一方で、現場で実際に使用する際には、耐荷重は20~30kg程度といわれています。これは新品で乾燥状態の段ボール箱である場合です。
長期保存した段ボール箱や、湿った状態の段ボール箱の場合、耐荷重は15~20kg程度までといわれています。
保管期間が長くなるにつれて、また湿った状態であればあるほど耐荷重が低下するためです。
段ボールのJIS規格の見方
先ほどもご紹介しましたが、段ボールシートの段の数や高さによって強度が変わります。この段数や段の高さごとにJIS規格によって規定されています。
段ボールの規格は「JIS Z 1516」で規定されている
JIS規格には、外装用段ボールの規格として「JIS Z 1516」があります。
フルート(段)の波の高さと、30cm当たりの波の数によって変わる
「JIS Z 1516」で規定されている主な3つの規格を見ていきましょう。
| 段の種類(記号) | 30cm当たりの段の数 | 段の高さ |
|---|---|---|
| Aフルート(AF) | 34±2 | 約4.5~4.8mm |
| Bフルート(BF) | 50±2 | 約2.5~2.8mm |
| Cフルート(CF) | 40±2 | 約3.5~3.8mm |
3つのうち、Aフルートは段の高さが最も高く、垂直方向からの圧縮強さや強度に優れています。そのため一般的に輸送や配送用の外装箱として最も多く使用されています。
Bフルートは段の数が多く、段が低いため、平面の圧縮強さに優れています。こちらも外装箱に利用されますが、缶詰や瓶詰などの内容物がつぶれにくいものに採用されています。
Cフルートは、日本ではあまり使われていませんが、海外ではよく利用されており、世界水準になりつつあるといわれます。Aフルートと強度はほぼ同様でありながら、少し薄いため、保管の際の省スペースに貢献します。
段ボールの耐荷重を上げて強度をアップする方法
輸送や配送時の外装箱や内装箱として段ボール箱を利用する際、中身を保護するために耐荷重を上げたい、強度をアップしたいと考えることもあるでしょう。その場合は、次の方法を駆使することで強度アップが可能です。
新品かつ乾燥状態のものを使用する
先述の通り、段ボールは古いほど、また湿気が多いほど強度が低下します。耐荷重を上げるには、できるだけ新品かつ乾燥状態のものを利用することが必要です。
バージンパルプの含有率が高いものを使用する
ほとんどの段ボール原紙は、古紙とバージンパルプを組み合わせて作られています。その中でも、強度が高いバージンパルプの含有率ができるだけ高いものを選びましょう。
ダブル以上の段ボールを使用する
先述の通り、段ボールシートは2枚重ねたダブルがあります。また3枚重ねたものもあり、強度を追求する場合はダブル以上のものを選ぶのも有効です。
布テープで梱包する
段ボール箱を梱包する際に貼り付けるテープは紙製よりも布製のほうが強度が高まります。強度を考える際には布テープを用いるようにしましょう。
テープの貼り方で強度を高める
テープは、貼り方によっても変わってきます。強度の高い貼り方として次の方法があります。
・十字貼り:底面に十字にテープをクロスさせて貼る。
・H貼り:底面に1本テープを貼って閉じた後、両端にH型になるようにテープを貼る。
・王字貼り:底面に十字貼りをした後、H貼りと同じ要領で両端をテープでふさぐ。
・米字貼り:底面に十字貼りを行い、さらに斜め方向(バツ印)にもテープを貼る。見た目が「米」に似ていることから米字貼りと呼ばれる。
また、段ボール箱の4つの角をテープで覆うように貼り付けると強度が上がります。角に段ボールシートを重ねるのも有効です。
これらの工夫を行っても、どうしても耐荷重や強度には限界があります。また、内容物の形状によっても耐荷重や強度は変わってくるため、最もおすすめなのは、内容物に応じて段ボールをカスタマイズすることです。
日本トーカンパッケージでは、内容物や輸配送環境、コストなどあらゆる要素を加味した上で、貴社に最適な段ボールのカスタマイズが可能です。耐荷重や強度を高めたいという場合はお気軽にご相談ください。
まとめ
段ボールの耐荷重について解説しました。大切な内容物を保護するには、まずは段ボールの特徴や強度の決まり方を熟知することが重要です。その上で、耐荷重や強度を高める工夫を行いましょう。
しかしながら、工夫にも限界があるものです。その場合は、日本トーカンパッケージにご相談ください。ビジネス目標にマッチした、耐荷重を高める設計のご提案が可能です。コスト低減のご要望もご相談いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。






