近年、環境保護の観点から、発泡スチロールの使用が見直されています。発泡スチロールは環境にどのような影響があるのでしょうか。また発泡スチロールに代わる製品も注目を集めており、脱発泡スチロールの流れも生まれています。今回は、脱発泡スチロールの動向に焦点を当て、代替するメリットとビジネスへの影響をご紹介します。
1.脱発泡スチロールが進む背景
脱発泡スチロールが進む背景をご紹介します。
●脱発泡スチロールの現状
近年、世界的に発泡スチロールを使わず、別の素材に代替する流れが生まれています。
発泡スチロールとは、発泡剤入りのポリスチレンの粒を蒸気で加熱し、何十倍にも膨らませることで製造されるプラスチック製品の一種です。
日本でも、脱プラスチックの取り組みの一環として梱包用発泡スチロールの廃止を進める企業もあります。
世界の中でも特に環境意識の高いとされるEUでは、2021年7月からプラスチック製品のうち、代替可能な皿、カトラリー、ストロー、コップ、発泡スチロール製食品容器などが規制対象となりました。
世界では、発泡スチロールの流通・販売が禁止される動きも見られます。
例えば、米国カリフォルニア州 ロサンゼルス市では、2023年4月から、発泡スチロールの使用を禁止する条例が施行されました。また同州のサンディエゴ市は、使い捨て発泡スチロールの流通・販売を禁止、ロサンゼルス郡では2023年5月から使い捨ての発泡スチロール流通・販売を禁止しました。
●発泡スチロールが環境に与える負の影響とは?
発泡スチロールを利用し続けることは、環境に負の影響をもたらすといわれています。
日本では発泡スチロールのリサイクル体制が整っていますが、海外ではそうとも限りません。地域によってはリサイクルができたとしても、リサイクルコストが高いため、リサイクルせずに埋立ててしまうこともあるといわれています。発泡スチロールはプラスチックの一種であり、微生物によって水やCO2などに分解される生分解性がないため半永久的に残り続けてしまいます。
このような特性から、世界的に脱発泡スチロールの動きが見られます。
2.発泡スチロールの代替品とその特徴
発泡スチロールの代替品となるといわれている素材とその特徴を見ていきましょう。
●紙製品
発泡スチロールの用途といえば、梱包材や緩衝材です。電化製品や家電製品などの梱包によく使われていますが、それらを代替するには、主に段ボールが挙げられます。
段ボールは紙製であることから生分解性があるのに加えて、日本ではリサイクル体制が整っており、循環する仕組みがあることから、環境への影響は発泡スチロールと比べて少ないといえます。
紙製は全般的に水濡れに弱い一方で、加工・成形により耐久性は向上させられます。緩衝性能も高めることができます。コストの面でもそれほど高額になることはないでしょう。
●生分解性プラスチック
生分解性プラスチックとは、生分解性のあるプラスチック製品を指します。使用後は、畑や土壌、たい肥中での生分解により、水とCO2に分解されます。またメタンガス発酵によるエネルギー回収も想定されています。通常のプラスチックと同様に扱うことができ、発泡スチロールに似た成形品を作ることもできます。
耐久性などはプラスチックと同様といわれていますが、コスト面では原材料のコストが高くなりがちで、通常のプラスチックと比べて高価であることが課題となっています。
●植物・動物ベースの素材
ココナッツの殻やエビの殻など植物性、動物性の素材をベースとするものです。発泡スチロールの緩衝材に似た成形物が製作されています。
世界的にトライされている発泡スチロール代替品については、耐久性なども追求されています。素材の調達面から、主要な産地であることが条件になりそうです。
3.発泡スチロール代替品のビジネスメリット
発泡スチロール代替品の利用を進めることは、次のようなビジネスメリットが期待できるでしょう。
●コスト削減
発泡スチロール代替品の活用は、総じて、直接コスト削減につながるとは言い難いところはあります。しかし長期的な目で見れば、コスト削減の可能性が期待できます。
特に段ボールについては身近な製品であることから、廃棄コストや調達コストの面でうまく調整することでコストを抑えることができる可能性があるからです。例えば軽量化して利用する素材の量を減らしたり、うまく加工することで緩衝材としての性能を向上させることが考えられます。
●ブランドイメージの向上
脱発泡スチロールの代替品の使用を進める企業は、「環境に配慮している」といった企業イメージが付き、消費者への良いブランディング効果を生み出すと考えられます。優良企業のイメージが浸透すれば、消費者の購買行動にも影響すると考えられ、売上向上や事業成長につながる可能性があります。
●法規制への対応
発泡スチロールは、今後、世界的に環境規制が進んでいくと見られます。日本でも進められる可能性があることから、早期から取り組んでおくことで、環境関連法規制の新設や変更に対応しやすいといえます。
4.脱発泡スチロールの推進事例
脱発泡スチロールに成功している企業の事例をご紹介します。
●米国のスタートアップ企業
米国では、スタートアップ企業がエビの殻を使って、発泡スチロールに代わる素材の製造に成功しています。エビの殻の主成分「キチン」は、発泡ポリエチレンの技術仕様や断熱、防御性に匹敵することから注目したそうです。
通常は廃棄されるだけのエビの殻を有効活用するサスティナブルな仕組みにも注目が集まっています。キチンを加工して作った素材は、押出製造装置で発泡体を製造することができ、加工などの応用も十分に行えるといいます。
●大型テレビの「発泡スチロール梱包」を廃止し新素材で代替
日本でも大手電機メーカーがディスプレイ製品の個装パッケージにおいて、緩衝材として発泡スチロールを使わない梱包を進めています。
代替としているのは、段ボールクッションとマルチモールドの緩衝材です。段ボールは強度を高めるために積層段ボールを使用するなど、耐久性と強度を保ちつつ、環境に配慮した紙系緩衝材への移行を実現しました。
5.まとめ
発泡スチロールの代替品は、今後のビジネスに必要不可欠となっていく可能性があります。すでにプラスチック規制が世界的に進んでおり、日本でも何らかの規制と呼ぶべき動きが進む可能性があります。プラスチックの一種である発泡スチロールについても、規制がかかる可能性もあるでしょう。
今のうちから、脱発泡スチロールに取り組んでおくことは、企業として責任遂行、サスティナブルな経営の推進、企業イメージ向上などメリットが大きいといえます。
日本トーカンパッケージでは、発泡スチロールに代わる加工技術「CFG(Cushion Flexible Gluer)」による梱包材や段ボールパレットを取り扱っております。CFGは内容物に合った成形が可能であり、段ボールシートを積層状にすることで、耐久性や強度を向上させることができます。段ボールパレットについては、プラスチックパレットからの代替にも利用できます。
発泡スチロールの代替として段ボールをご検討されている場合、段ボールの形状や加工のご提案ができますのでぜひお気軽にお問合せください。