物流におけるCO2排出量の削減 ~プラコン・クレートの段ボール転換で変革

気候変動への対策が急がれる中、物流業界においては、CO2排出量削減のために、様々な取り組みが実施されています。そこで今回は、物流業界におけるCO2削減課題のほか、国が推進する施策とともに、物流倉庫で多く活用されているプラコンやクレートの段ボール転換によるCO2削減について解説します。

1.物流業界におけるCO2排出量削減課題

世界の環境問題の一つである気候変動問題は、年々深刻化しています。気候変動抑制に関する国際的に採択された「パリ協定」で定められた目標を達成するためには、今世紀後半における世界の温室効果ガス排出を正味ゼロにする必要があるといわれています。

そうした中、日本は、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減と、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現するという目標を掲げており、あらゆる業界で排出削減が求められています。

物流業界においては、トラック等の自動車の排気ガスによるCO2排出量の削減が急務となっています。
日本のCO2排出量のうち、自動車、鉄道、船舶、航空を含む運輸部門は2億600万トンで18.6%を占めます。運輸部門のうち、貨物自動車は36.8%を占め、日本全体で6.8%となっています。

2.「地球温暖化対策計画」物流CO2削減施策

国は、2021年10月に「地球温暖化対策計画」を公表し、運輸部門の物流関連においても具体的施策を提示しています。

運輸部門における2019年度の二酸化炭素排出量は、2億600万トンとお伝えしましたが、これは2013年度比で8.2%減少しています。主な減少要因は、自動車の燃費改善や貨物輸送における輸送量の減少等とされています。

この排出量の減少傾向を一層、着実なものとするため、自動車・道路交通流対策、公共交通機関の利用促進、物流の効率化など、総合的な対策を推進しています。

具体的には、脱炭素物流の推進としてのトラック輸送の効率化、共同輸配送、海上輸送や鉄道貨物輸送へのモーダルシフトなどが挙げられています。また物流施設の脱炭素化については、倉庫などの太陽光発電設備等の再生可能エネルギー設備、無人フォークリフトや無人搬送車等、無人化・省人化に役立つ機器を同時導入することや、倉庫のゼロエネルギーモデルの普及を促進するなどが挙げられます。

3.プラコン・クレートの段ボール転換

物流工程におけるCO2排出削減は、倉庫内におけるプラスチックコンテナ(プラコン)やクレートなど、仕分けや保管、輸送時に重要な製品の脱プラスチックの取り組みからも実施されています。

3-1.段ボールへの転換による持続可能な事業展開

段ボールは、持続可能な事業展開にも希望があります。段ボールは原料は木材であることから、プラスチックを原料とするプラコンと異なり、使用後にリサイクルができる上に、放置されたとしても土にかえり、環境を汚しません。また、段ボールは内容品に合わせた設計が可能なので、プラコンと比べて緩衝性や商品固定性が高いこと、温度変化の影響が軽減されること、積載効率の向上に貢献することなど、総合的に見て物流工程における豊富なメリットがあり、事業の持続性が高いと考えられます。

3-2.ライフサイクル

プラコンやクレートを、人にも環境にもやさしい優れた資材である段ボールに転換することで、CO2排出削減に寄与 します。なぜ段ボールに転換することで、CO2排出量削減につながるのかといえば、ライフサイクルに関係しています。

段ボールは、間伐された木や細い木、曲がった木、板を取った残りの木などを利用して作られており、森林資源を有効活用しています。また使い終わった段ボールは古紙回収され、リサイクル率が高いのが特徴です。廃棄の工程がないほか、リサイクル工程の環境負荷も低いことから、代替することで、CO2排出量抑制につながります。

一方で、プラコンやクレートはプラスチック製であることから、リサイクルするとしても、段ボールのように、使用後にすべてがまた製品として生まれ変わるわけではなく、サーマルリサイクルという燃焼させて熱を利用するリサイクル方法が多くを占めています。燃焼する際のCO2排出量が、問題視されています。

また段ボールは、プラスチックと比べて廃棄や輸送による回収、洗浄の工程がないため、その工程におけるCO2の排出がありません。そのため、段ボールはライフサイクル全体におけるCO2排出量が削減できる可能性があります。

クレートと段ボールの地球温暖化影響を比較したLCA評価(※)によれば、クレートは合計「0.362」に対して、段ボールは「0.307」でした。クレートには、段ボールにない「廃棄、輸送(回収)、洗浄・乾燥」の工程があるため、より環境影響が低減できると考えられます。

※日本トーカンパッケージ調べ。LCAとは、ライフサイクルアセスメントの略で、製品の原材料調達から、生産、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクルにおける投入資源、環境負荷及びそれらによる地球や生態系への潜在的な環境影響を定量的に評価する手法。「Kg・CO2e」で表す。

また段ボールは、洗浄の工程がないことから、洗浄工程のあるクレートと比較して、水の使用量削減、下水処理費用にもつながります。

3-3.段ボールのその他の利点

段ボールは、先述の通り、緩衝性や商品固定性が高く、商品の安全性をより高く保ちやすいほか、商品の形状に合わせて変更の自由度が効きやすい、保温・保冷性があるといった梱包する商品を大切に扱えるというメリットがあります。そのため、顧客満足度向上にもつながります。また使用後は折りたたんで保管できるため、省スペース化にもつながります。

4.まとめ

物流業界においては、CO2排出量削減のために、様々な取り組みが実施されています。そのなかでも、倉庫などの物流施設におけるプラコン・クレートの段ボール転換も、CO2排出量の削減につながる可能性があります。