サプライチェーン全体を通じて、経済効率向上と環境負荷低減の両立を目指す「グリーンサプライチェーン」をマネジメントする試みが進められています。サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算出などを通じて、各企業はさまざまなメリットが得られます。
今回は、グリーンサプライチェーンの概要からマネジメントに取り組むメリット、物流工程における具体的な対応例をご紹介します。ぜひ取り組みにお役立てください。
1.グリーンサプライチェーンとは?
グリーンサプライチェーンとは、サプライチェーンを通じて行われているマネジメントに「環境」という指標を取り入れることで、経済効率と環境負荷低減の両面を目指すものです。
サプライチェーンとは、原料調達・製造・物流・販売・廃棄までの一連の流れ全体を指します。
もともと製品が生産され、消費者に提供され、廃棄されるまでの製品の流れの利益効率を向上させるためにサプライチェーンマネジメントが行われてきました。そのマネジメントに環境指標を取り入れることで、昨今求められる環境保護への対応を強化することができます。
●グリーンサプライチェーンマネジメントが求められる背景
なぜグリーンサプライチェーンのマネジメントが必要になってきているのでしょうか。その背景として大きいものは、地球温暖化をストップさせるため、脱炭素化への取り組みが世界的に高まっており、「GHGプロトコル(※1)」や「SBT(※2)」など世界的な温室効果ガス排出量の開示要求が高まっていることが挙げられます。
これにより、企業単体はもちろんのこと、サプライチェーンについても温室効果ガス排出量削減や情報開示の動きが進んでいます。
※1 GHGプロトコル:温室効果ガス(CO2、CH4、N2Oなど)の排出量の算定・報告の際に用いられる国際的な基準。ガイドラインや方法論を提供する。
※2 SBT:「Science Based Targets」の略称で、企業が中長期的に算定する温室効果ガス排出削減目標の指標の一つ。2025年の国際条約 パリ協定が合意した「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える」を背景とする。
●グリーンサプライチェーンマネジメントの日本の現状
日本では「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定に関する基本ガイドライン」が公開されており、このガイドラインに基づいて算定や報告が行われています。またCSRレポートなどを通じて情報開示する動きも進んでいます。
しかしながら、自社のサプライチェーンを通じた算定や報告についてはまだ少ないといわれており、今後はサプライチェーンを通じて削減行動を起こす取り組みが求められています。
2.サプライチェーン排出量とは?
サプライチェーンから発生する温室効果ガスの排出量を「サプライチェーン排出量」と呼びます。自社単体の排出だけでなく、事業活動に関係するサプライチェーンを含めたあらゆる排出を合計した排出を指します。
サプライチェーン排出量は、GHGプロトコルにおいて「Scope(スコープ)3」という指標として定義されており、日本の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定に関する基本ガイドライン」はこのScope3を基準に作成されています。
サプライチェーン排出量は、次のように構成されています。
サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量
Scope1:事業者自らの燃料の使用や工業プロセスによる直接排出
Scope2:事業者が他社から購入した電気・熱などの使用に伴う間接排出
Scope3:事業者の活動に関連するその他の間接排出
●Scope3の15のカテゴリ
Scope3は、次の15のカテゴリに分類されています。
出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」P10
各カテゴリについて、算定する目的が達成できるレベルを考慮しながら、算定方針を決め、データ収集や排出量の算定を進めていきます。
3.サプライチェーン排出量を算出するメリット
企業が自社のサプライチェーン排出量を算出するメリットは、数多くあります。例えば、次のことが挙げられます。
●排出量の可視化により削減可能な対象を特定できる
サプライチェーンが現状、どのくらいの温室効果ガスを排出しているのかは、なかなか知り得ないものです。そうした中、サプライチェーン排出量を算出する取り組みを行うことで、排出量を可視化することができます。その結果、サプライチェーンの現状把握ができるため、どこで排出量が多いのかを把握でき、削減可能な対象を特定することができます。
●他社と共同で排出量を削減できる
温室効果ガスの排出量の削減は、多くの場合、企業が単独で行うものですが、サプライチェーン排出量を算出することで、サプライチェーンを構成する他社と共同して排出量削減の取り組みを実施できるようになります。従来、手つかずだった分野の取り組みにも広げていける可能性があります。
●投資家などからの質問対応が容易になる
サプライチェーン排出量を算出することは、自社の活動全体を見通し、管理することにもつながるため、環境経営指標の重要な一つとなり得ます。また、投資家からの質問に対応するときに示すことができる明確な指標にもなり得ます。排出量の情報開示については、社会的要請が強まっていることから、重要な取り組みとして位置付けられます。
●情報開示によるESG投資の促進
投資家への適切な対応が可能になるということは、企業の評価や価値向上につながり、ESG投資の促進など資金調達に発展する可能性があります。
4.製造・輸送現場でのCO2排出抑制のために梱包資材の見直しを
日本トーカンパッケージでは、製造業などの企業が環境配慮への取り組みを進める一助となる梱包材や製品、ソリューションを多数ご提供しております。その中でも、サプライチェーン全体におけるCO2排出抑制に寄与するアプローチ方法の一つとして、梱包資材を見直す手法と事例をご紹介します。
●段ボール資材の使用面積を削減した事例
従来から使用していた段ボール資材を見直し、資材の使用量を削減することで、資材コストや廃棄量の削減につながることがあります。
【事例】
・W型仕切り
「W型仕切り」は、仕切りを簡素化することで、仕切りの材料面積を削減することができる段ボール資材です。例えば「カップデザート15個入」に採用された事例に基づき算出した場合、W型仕切りを利用することで仕切り面積が約29%削減できます。
また、仕切りは折り線に沿って折り山型にするだけで、そのまま段ボール箱に詰めるだけなので、作業性も改善します。また簡素化された設計により、環境に優しいイメージを持たせることができます。
・スマートトレー
「スマートトレー」は、小型トレーケースの額縁をなくすことで材料面積を削減する段ボール資材です。「トマト 1kg」への採用事例では、トレー面積を約40%削減できました。
精度よくスタッキングができる「センタリングデバイス」により、上下の箱をしっかり嵌合することから、荷ずれによる耐荷重劣化を抑え、材料面積削減による強度劣化の影響を少なくしています。
【関連リンク】
>ヒラメキノハコ
●段ボール箱の標準化により積載効率を向上させた事例
段ボール箱のサイズをパレットサイズに合わせて変更し、積載効率を上げることでトラック台数を減らす取り組みです。
【事例】
ある切り花の卸売業者は、従来、トラックへ直接段ボール箱を積む「バラ積み」を行っていましたが、荷役に時間がかかるため、トラックドライバーの待ち時間が長引いていることが課題でした。そこでパレットへの荷役に変更して待ち時間短縮化を目指そうとしましたが、パレットに積むと、バラ積みよりも積める段ボール箱の数が減ってしまいます。
そこで段ボール箱のサイズや形状を見直し、パレットに合わせて標準化を行いました。これにより積載効率を向上させることができ、大型トラック一台につき、荷積み時間が2時間弱削減できたと共に、1日あたり1万円ほどの人件費の削減にもつながりました。
【関連リンク】
>積載効率とは?改善事例など徹底解説!
>積載効率向上で目指す物流改善
5.まとめ
グリーンサプライチェーンマネジメントの取り組み、およびサプライチェーン排出量を算出することは、企業の価値を上げる、多様なメリットがあります。サプライチェーンを通じた具体的な取り組みは複数ありますが、日本トーカンパッケージでは、物流工程における梱包資材の改善策をご提案できます。
今回ご紹介した事例以外にも、複数の製品や事例がございますので、ぜひ資料やサービスページをご覧ください。
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