脱プラスチックの代替品の活用で
環境に優しい企業経営を

世界的に進む脱プラスチックの動きから、日本国内でも対応が急がれています。プラスチック製造時の温室効果ガス排出量やプラスチックごみの増加などの問題を受け、企業が環境責任を果たすことは重要といえます。今回は、日本の物流会社やメーカーの方々が脱プラスチックを進めていくに当たって必要となる代替素材の選び方や活用方法を解説します。

1.プラスチック使用の現状と脱プラの動き

プラスチック使用の現状と脱プラの動き

現状、国内企業において、プラスチックはどの程度、使用されているのでしょうか。また、脱プラスチックの動きも見ていきましょう。

●日本におけるプラスチックごみ排出の実態
日本では、2013年時点で、年間約9,400千トンのプラスチックごみが排出されている(※1)ことがわかっており、そのうち、容器包装・コンテナーは4,260千トンを占めています。そのうち、容器包装リサイクル法に基づいて回収されるものは約4分の1の1,040千トンとなっています。

※1 消費者庁「令和2年版消費者白書

●プラスチックごみの影響
プラスチックごみは、不適切な処理により、海や土壌、大気汚染が懸念されています。特に海洋に流れ出たプラスチックごみが生態系への悪影響を及ぼしていることは世界的に大きな問題となっています。また、化学物質による人の健康への悪影響も決して軽視できません。

そしてプラスチックは採掘や製造のほか、廃棄時の温室効果ガスの排出により、地球温暖化への懸念が問題視されています。

地球環境および人間をはじめとした生態系が、プラスチックによって破壊されつつあるのです。

●企業とプラスチック問題の関係
このような状況の中、世界各国の企業は、プラスチック製造や利用、廃棄の削減に取り組んでいます。プラスチックごみを減らすためには「3R」、つまり「Reduce(材料やごみを減らす)・Reuse(捨てずに繰り返し使う)・Recycle(捨てずに再資源化する)」が必要です。企業がこれらに真摯に取り組むことは、企業の社会的責任を果たすためにも必要不可欠といえます。

●脱プラスチックの動き
脱プラスチックとは、これまでプラスチックを利用していた場合に、使用を停止したり、別素材に代替したりする取り組みを指します。この脱プラスチックの動きは世界的に高まっています。例えば、次のような取り組みは典型的な事例です。

・使い捨てプラスチック容器の使用禁止
・使用済プラスチック容器の回収
・量り売りや紙、段ボール、木、ガラスなどの素材への代替
・再生プラスチック技術の開発・販売

脱プラスチックの動きが世界的に高まっていることには、SDGs(持続可能な開発目標)の広がりにも関係しています。SDGsは国連サミットで採択された2030年までの国際的な目標であり、「誰一人取り残さない」持続可能な社会・経済・環境を作り、グローバルガバナンスの構築を目指すものです。中でも脱プラスチックの取り組みは大きなテーマの一つとなっています。

2.プラスチック代替品・代替素材の種類

プラスチック代替品・代替素材の種類

プラスチック代替品・代替素材には、どのような種類があるのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。

●段ボール
段ボールは、紙製という点で廃棄後に自然に還ることから環境負荷が低く、さらに国内ではリサイクルシステムができあがっている、環境面で優秀な素材です。そのためプラスチックの代替素材として優れています。

また段ボールは加工しやすいため、用途や内容物に合わせた設計やカスタマイズが可能な利点があります。使用面積を削減するために工夫することで、コストの面でもメリットが得られます。

●バイオマスプラスチック・植物由来素材
トウモロコシやサトウキビなどの植物を利用した再生可能な資源を原料に制作するバイオマスプラスチックなどは、プラスチックと比べて環境負荷を低減できます。植物は成長過程でCO2を吸収することから、廃棄物の焼却時に排出されるCO2は実質、地球上のCO2濃度を増やさないとされる「カーボンニュートラル」な素材といわれています。ただし、必ずしも自然界で分解されるわけではないため、注意は必要です。すでにバイオマスプラスチックを利用したレジ袋などが開発されています。

●生分解性プラスチック
生分解性プラスチックとは、文字通り、自然界で分解されるように開発されたプラスチックです。一般的なプラスチックと比べて環境への影響が少ないとされています。しかし分解には長い期間がかかり、化学物質が微量、放出される可能性が指摘されている点は留意しておきましょう。

●木材・紙
木材は自然に還ることから、木材から作られる紙も含めて、脱プラスチックに有効な素材といえます。実際、プラスチック製のストローを木製や紙製ストローに代替する動きもあります。
とはいえ木材や紙であれば何でも良いというわけではなく、森林保護の観点から、森林環境や地域社会に配慮して作られた製品を認証する「FSC認証」等を受けたものを利用することが大切です。近年は、木材でありながら透ける半透明のものが開発されるなど、発展が期待されています。

3.物流業界における代替品の活用方法

物流業界における代替品の活用方法

物流会社や荷主であるメーカーなど物流に関わる企業は、包装・梱包の脱プラスチックのためにどのような代替品を利用しているのでしょうか。具体例と共にご紹介します。

●プラスチック梱包から代替素材による梱包への切り替え
物流における梱包で利用されるプラスチック製品には、荷物を載せるプラスチックパレット、発泡スチロールや気泡緩衝材、ビニールフィルムなどが挙げられます。パレットや梱包材・緩衝材をできるかぎり代替素材に切り替える取り組みが重要です。

【事例】プラスチックパレットから段ボールパレットへ
例として、プラスチックパレットから段ボールパレットへ切り替えることで、脱プラスチックによる環境負荷低減が期待できます。

また日本トーカンパッケージの段ボールパレット「CFGマルチパレット」を利用して、パレット単位で発送する製品を段ボールで集合包装化(輸出用のスキッド等)することで、包装作業の時間短縮や輸送効率向上が期待できます。段ボールパレットはプラスチックパレットと比較して軽量であるため、重量単位で運賃が発生しているケースで物流コスト削減にも寄与します。

【関連リンク】
CFG

【事例】発泡スチロール梱包から段ボール緩衝材の利用へ
発泡スチロール梱包を段ボール緩衝材に代替した事例があります。

ある企業では、精密機器の梱包の際、製品保護のために発泡スチロールの利用が欠かせませんでした。しかしSDGsへの対応策として、段ボール資材を利用した緩衝材に代替しました。工夫により、衝撃吸収性を実現しています。

●サプライチェーン全体における持続可能な素材利用の推進
自社のみならず、サプライチェーン全体における持続可能な素材を利用することを推進することも重要です。環境配慮の取り組みをサプライチェーン全体で実施する「グリーンサプライチェーンマネジメント」も推進されるようになり、より全体的、包括的な取り組みが求められています。

4.企業経営における環境戦略の策定に向けて

企業経営における環境戦略の策定に向けて

脱プラスチックの対応は、局所的に行うのではなく、長期的な経営視点で環境戦略の策定を行い、それに基づく会社全体の取り組みにより、適切に進められると考えられます。

●戦略的な環境経営の推進
環境に配慮した企業経営を進めるためには、戦略的に進めることが重要です。環境省の「戦略的な環境経営プロセス」においては、次の7ステップが示されています。

1.環境負荷の状況(インプット、循環利用、アウトプット)を、製品等のライフサイクルで把握
2.ステークホルダーへの対応
3.経営への影響から重要な課題を特定
4.重要な課題に対するための方針、事業戦略の策定
5.中長期・短期における計画の策定
6.組織体制(EMS含む)の適切な運用と全従業員への周知
7.実績の把握と経営者による評価・改善策

出典:環境省 環境と経営

●長期的な取り組みにおける重要項目
具体的な実行計画は、長期間に渡って策定することが重要です。環境省は、今後10年間における環境経営を展望すると、次の事項が重要であることを示しています。

1.経営者の主導的関与
2.環境への戦略的対応
3.組織体制とガバナンス
4.ステークホルダー(利害関係者)への対応
5.バリューチェーン志向
6.持続可能な資源・エネルギーの利用

出典:環境省 環境と経営

●従業員や顧客への環境意識の啓蒙活動
環境経営を進める上で重要になることとして「ステークホルダー(利害関係者)への対応」がありますが、その対応の一つが、啓蒙活動です。

環境対応は、意識改革を行うことが先決であり、組織内や顧客にその重要性を浸透させ、自分ごと化してもらうことが最重要と考えられています。一人ひとりの意識が変われば、行動につながります。従業員向けには講習会や勉強会などの開催、顧客に対してはコーポレートページで情報発信したり、展示会などのイベントを開催したりする方法が挙げられます。

5.まとめ

脱プラスチックは企業の社会的責任であり、プラスチックに代わる素材の選択によるポジティブな影響は社内外に存在します。企業責任を果たすことができ、持続可能な社会づくりに寄与することに加え、企業価値を高め、顧客や投資家からの評価を高めることにもつながります。

今後は、さらに世界的にプラスチック規制が進んでいくものと考えられます。

まずは環境負荷の状況を把握し、重要な課題を特定した上で、対応するための方針や事業戦略を策定します。そして中長期・短期に渡る計画を策定し、啓蒙活動も含めた活動を推進していきましょう。