物流業界に期待されるSGDsへの取り組み

社会的に取り組みが活発化するSDGs。いま、物流業界においても、取り組みが進んでいます。物流業界の課題解決にもつながる物流に関係するSDGsと共に、物流業界でSDGsが推進される背景や物流業界におけるSDGsへの取り組み例をご紹介します。

1.物流に関係するSDGs

まずSDGsとは何か、そして物流に関係するSDGsを解説します。

1-1.SDGsとは

SDGsとはSustainable Development Goalsの略称で、持続可能な開発目標と訳されます。

2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されました。17のゴール・169のターゲットから構成されており、あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つことや、国内的・国際的な不平等と戦うこと、平和で公正かつ包摂的な社会をうち立てること、人権を保護しジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントを進めること、地球と天然資源の永続的な保護を確保すること、包摂的で持続的な経済成長や共有された繁栄、働きがいのある人間らしい仕事を作り出すなど、テーマは幅広く取り扱われています。

1-2.物流に関係する主なSDGs目標

SDGsの17のゴールは、世界や日本単位で取り組むべき目標です。そのうち「物流業界」からみたときに、目指すべきものはほとんどのゴールに関係してきます。その中でも、物流業界に関係する主なゴールを取り上げます。

「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
すべての人が、手頃に、信頼できる、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保するようにするための目標です。
貨物を運ぶ自動車の排気ガスによるCO2排出削減のための取り組みなどが該当します。

「8.働きがいも経済成長も」
経済成長と共に、働きがいや経済生産性の向上、雇用創出などを目指す目標です。
トラックの運転者不足が叫ばれる中、働く環境の改善を含む物流改善運動としての「ホワイト物流」の取り組みなどが該当します。

「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」
強固なインフラ整備とともに、包摂的で持続可能な産業化を促進し、技術革新、イノベーションなどを目指す目標です。
物流業界においても、人手不足で「運べない」問題が大きくなる中、持続可能な技術革新を含む取り組みが重要になっています。

「13.気候変動に具体的な対策を」
温室効果ガスの排出を原因とする地球温暖化現象による、世界各地で生じている気候変動やその影響を軽減するための具体的な対策を講じるための目標です。
物流においては自動車からのCO2排出量削減のための燃費改善や水素自動車の導入、船舶や航空機利用の貨物輸送に移行するモーダルシフトの実践などが該当します。

2.物流業界でSDGsが推進される背景

物流業界に限らず、日本国内の企業全体でSDGs達成のための取り組みが進んでいるのは、日本経済団体連合会(経団連)が、SDGsの達成に向けて、新技術を最大限活用することにより経済発展と社会的課題の解決の両立するコンセプト「Society 5.0 for SDGs」を提唱していることが背景の一つに挙げられます。

経団連によれば、Society 5.0とは、「AIやIoT、ロボット、ビッグデータなどの革新技術をあらゆる産業や社会に取り入れることによりする実現する新たな未来社会の姿」であり、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、人類社会発展の歴史における5番目の新しい社会の姿とされています。

Society 5.0は、さまざまな社会的課題の解決とともに、国や人種、年齢、性別を越えて必要な人に、必要なモノ・サービスが、必要なだけ届く快適な暮らしを実現するものです。すでに幅広い業種で取り組みが進んでいますが、物流が果たす社会的役割は非常に大きいことから、Society 5.0の一端として物流業界のイノベーションも求められています。

特に物流業界でSDGsが推進されている背景には、さまざまな物流課題の存在があることが挙げられます。

国内のCO2排出量約2割に相当する運輸部門は、CO2排出量削減施策は急務となっています。また従来から物流業界が抱える人手不足や、労働環境の改善に向けた働き方改革の推進など、官民一体で取り組むべき課題も存在します。

これらの課題解決は、いずれもSDGsのゴールと共通項があることから、物流業界に携わる企業全体でSDGsに取り組まれています。

3.物流業界におけるSDGsへの取り組み

物流業界においては、すでに多数のSDGsへの取り組みが推進されています。ここでは、主な取り組みをご紹介します。

●輸配送業務の共同化
複数の企業が目的地まで同じトラックを共有し、荷物を配送する共同配送が進んでいます。積載効率向上による配車数削減により輸配送の効率化と物流コスト削減、CO2排出削減が期待できます。またトラックドライバー不足への対応や長時間労働抑制にもつながります。

●モーダルシフトへの転換
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の少ない鉄道や船舶 の利用へと転換することです。CO2排出量削減のための代表的な取り組みです。

●「ホワイト物流」推進運動
「ホワイト物流」推進運動とは、トラックドライバー不足を背景とし、安定的な物流確保と経済成長を実現することを目的に、長時間労働などの業務負荷や女性及び高齢者が働きやすい環境づくりを含む労働環境の改善や、物流工程の見直し・改善などを実施する運動です。すでに多くの企業が賛同して取り組んでいます。

Society 5.0は、さまざまな社会的課題の解決とともに、国や人種、年齢、性別を越えて必要な人に、必要なモノ・サービスが、必要なだけ届く快適な暮らしを実現するものです。すでに幅広い業種で取り組みが進んでいますが、物流が果たす社会的役割は非常に大きいことから、Society 5.0の一端として物流業界のイノベーションも求められています。

●グリーン物流パートナーシップ
グリーン物流パートナーシップは、2005年から実施されている取り組みで、経済産業省、国土交通省、一般社団法人日本物流団体連合会、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会主導で実施しているものです。
グリーン物流とは、輸送時におけるCO2排出量の削減といった地球に優しい物流の取り組みの総称で、それを実現するためには、産業界と物流業界が共同で施策を行う必要があることから立ち上げられました。CO2排出量削減のための取り組みを中心に活動しています。

●段ボールへの転換による持続可能な事業展開
物流業界におけるCO2排出は自動車の排気ガスだけではなく、梱包材やプラスチックコンテナ、クレートなどの廃棄によるものもあります。またプラスチック削減による海洋汚染対策などが求められています。また、段ボールはプラスチックコンテナと異なり、使用後にリサイクルされるため、回収が不要です。このことから、梱包材やプラスチックコンテナ、クレートの代替として、または積極的に段ボールを使用することで、循環化社会に寄与することから、持続可能な事業展開が可能となります。
さらに、段ボールは内容品に合わせた設計が可能であるため、効率的に段ボールを設計することにより、トラック等への荷積みの際の積載スペースの削減につながり、積載効率の向上に貢献します。

4.まとめ

物流業界では、すでに多くの企業でSDGsへの取り組みが進んでいます。物流業界特有の課題解決とSDGsの目標達成に向けて、業界全体が協力しながら取り組んでいきたいものです。