物流2024年問題で荷主に
リスクのある勧告による罰則とは?

物流2024年問題で荷主にリスクのある勧告による罰則とは?

物流2024年問題が、より深刻化しており、物流業界に関わる運送会社や荷主企業(以下、荷主)などあらゆる関係各社に影響が及んでいます。この諸問題のうち、荷主にふりかかるリスクの一つに、「荷主勧告」における罰則があります。
今回は、その罰則について取り上げ、罰則を避けるための対策をご提案します。

1.物流2024年問題とは?

物流2024年問題とは?

働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、物流トラックドライバーを含めた自動車運転業務の年間時間外労働が上限960時間(1ヵ月あたりに直すと80時間)に制限されることに伴い発生する諸問題、「物流の2024年問題」への対応が急がれています。

運送会社にとっての問題は、ただ単にトラックドライバーに長く働かせられない、残業代が高くなるなどだけではありません。近年、物流業界では人材不足が深刻化している上にドライバーの高齢化が進んでおり、低賃金・長時間労働や、物流量増加と多頻度・少量輸送のニーズによる効率の悪化などの課題もあり、問題は深刻になっています。また労働時間の上限規制違反への罰則リスクも回避せねばなりません。

荷主にとっても、運賃上昇や集荷時間の前倒しなどの対応が求められるほか、「荷主勧告」に該当するリスクを回避する必要があります。

2.物流2024年問題が荷主に及ぼす影響

物流2024年問題が荷主に及ぼす影響

物流2024年問題は、特に荷主へどのような影響を及ぼすかを確認しておきましょう。

●「荷主勧告」に該当するリスク
荷主勧告とは「荷主勧告制度」に基づいて行われるものです。この制度では、トラック運送事業者の労働時間のルール違反や、道路法の車両制限令違反、例えば車両の総重量、軸重等の一般的制限値または許可値を超える車両の運行などの違反行為に対して行政処分を行う場合に、その違反行為が荷主の指示によるなど、主に荷主の行為に起因するものと認められるときに、国土交通大臣が荷主に対して違反行為の再発防止のための適当な措置を執るべきことを勧告することが定められています。

勧告を受けた場合には、荷主名と事案の概要が公表されます。今後、ますます時間短縮が求められる中、不意な行動により、荷主勧告の対象となるリスクがあります。

●人件費上昇に伴う運賃の値上げのリスク
年間時間外労働の制限により、トラックドライバーの総稼働時間が減少し、輸送力は減少します。その結果、需給バランスが崩れ、物流費の値上がりは避けられません。また運送会社の中には人材流出を予防するために、トラックドライバーの賃金を上げることもあるでしょう。その結果、運賃の値上げが生じる可能性があります。

●トラックドライバーの残業時間超過防止のため、集荷時間の前倒しが発生
運送会社はトラックドライバーの時間外労働の発生を避けるため、集荷時間を現状より前倒しする方向に動くでしょう。その結果、荷主は出荷時間の前倒しの必要性が生じるため、これまでのスケジュールの見直しを迫られます。

●運送会社が長距離輸送の対応ができなくなる可能性
トラックドライバーの拘束時間の制限から、今後、運送会社はコストと時間を要する長距離輸送の対応を辞退する恐れもあります。そのため、荷主はこれまで運べていた荷物を運べなくなる恐れがあります。

3.荷主勧告制度における荷主への罰則

荷主勧告制度における荷主への罰則

荷主勧告制度について、もう少し詳しく勧告の対象となる行為や罰則などを確認しておきましょう。

●荷主勧告制度における勧告とは?
国土交通大臣が荷主勧告を行う目的は、運送会社などによる違反行為の再発防止のために、適当な措置を執ることにあります。再発防止には荷主の配慮が必要不可欠であるため、荷主への理解を呼びかけ、勧告制度によって配慮の意識を高めることで、より違反行為を減少させる意図があります。

●荷主勧告を受ける恐れのある行為の例
荷主勧告を受ける恐れのある行為の例には、次のことが挙げられます。

・恒常的に長時間の荷待ち時間を発生させる
運送会社側が何度も申請しているのにも関わらず、荷主がなかなか荷待ち時間を短縮せず、継続して発生させるといったケースです。

・非合理な到着時間指定を行う
荷主が運送会社へ高速道路代を支給せず、無理な時刻を指定し、到着時間をせかすなどのケースです。

・重量違反となるような配送依頼をする
荷主が重量オーバーになることをわかっていて運送会社に配送依頼をするといったケースです。

・やむをえない遅延に対するペナルティを運送会社やトラックドライバーに課す
突然の大雪でトラックの到着時間が遅れるなど、やむをえない遅延が発生した後、荷主が遅延した商品の買取を運送会社へ要求するなど、ペナルティを課すといったケースです。

●勧告を受けた場合の罰則
上記のような行為により勧告を受けた場合、荷主名と事案の概要を公表されるという罰則があります。公表されれば、運送会社や取引会社にとどまらず、社会からの信頼が低下し、事業継続に影が差してしまいます。

他にも、勧告には至らないものの違反行為への関与が認められる荷主に対する「警告」、関係機関からの法令違反情報等をもとに関係する荷主を特定し早期に働きかけを行う「協力要請」といった措置を通達する取り決めもあります。

荷主は荷主勧告制度を熟知し、罰則リスクを日常的に回避する必要があります。

4.荷主が罰則を避けるための対策

荷主が罰則を避けるための対策

では、荷主が勧告による罰則を避けるためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。主な対策として次のことが考えられます。

●法定通りの時間内稼働を心がけ、無理なスケジュールは見直す
年間時間外労働の制限を理解し、トラックドライバーが時間内に稼働が完了できるよう、はじめから無理のあるスケジュールは見直しておくことが挙げられます。

●積載効率向上・業務効率化
限られた時間内にこれまで通り、荷物を運んでもらうための方法として、積載効率向上が対策として大きく貢献します。積載効率とは、荷物を運ぶトラックの許容積載量に対して、実際に積載する荷物の割合のことをいいます。積載効率向上によって、少ないトラック数でより多くの荷物を運ぶことが可能になります。

積載効率の向上策としては、システムによる運行状況の可視化によるトラックの無駄な待機時間などの削減、積載効率の均等化、無駄な荷室スペース削減、共同配送、段ボール箱の見直しなどがあります。

・段ボール箱の標準化による待機時間の短縮例
ドライバーの待機時間の短縮を目的に、バラ荷役からパレット荷役への転換を行った切り花の卸売業の事例があります。花用段ボール箱をパレットサイズに合わせて商品を入れる段ボール箱のサイズを統一する必要があり、サイズの標準化を図りました。その結果、積載効率が向上し、大型トラック一台につき、1日あたり1万円ほどの人件費を削減でき、作業時間は2時間弱の削減につながりました。

・段ボール箱の見直しによる積載効率向上
段ボール箱の見直しについては、日本トーカンパッケージが得意とすることです。例えば、中身の製品を並び替えることにより、段ボールのサイズダウンが可能になり、パレットへの積載効率が向上する場合があります。

【関連コラム】
>「積載効率とは?改善事例など徹底解説!
>「段ボールによる物流標準化の事例をご紹介

5.まとめ

物流2024年問題は、今後もますます深刻化していくものと考えられます。荷主においては、荷主勧告やその罰則を予防することが、事業継続のために重要です。ぜひ早期から対応策を取っておくことをおすすめします。

今回ご紹介した物流2024年問題とその対応策について詳しく解説している資料「物流2024年問題まるわかりガイド」も合わせてご覧ください。